第54回秋季日本歯周病学会学術大会@下関

さて、午後はまた学会場に戻りまして、シンポジウムを聴講しました。
日本口腔検査学会共同企画の「歯周治療における口腔検査の展望」
これが非常に面白かったわけです。
特に、東京歯科大学の井上孝先生の講演は興味津々でありました。

我々はGTR、エムドゲイン、FGF2、インプラントなど
次々出てくる材料や技法に目を奪われがちです。
しかし井上先生は
「これらを病態論的に考えれば、すべて非自己の応用なのです」と言われるのです。
以下の3つの「 」内の文章は井上先生の抄録からの引用です。

「う蝕や歯周病に罹患して、感染象牙質や感染セメント質になれば、その部位は非自己ですし、癌になれば生体が作り出した非自己になるのです。非自己であれば生体はそれを排除するように働きます。歯周ポケットも細菌という非自己が生体内に入り込んでできた立派な病態です。医療は、非自己を除去し、自己の治癒を助けることと言えるでしょう。」

「今までの歯科治療を見ると、欠損をいかにして修復し、審美性を回復するかに主眼が置かれ、診断に関わる検査や治療後の評価に用いる検査がなく、エビデンスを構築するための基盤を持ってこなかった、つまり医療の本質を忘れていると考えられます。つまり歯科では、病態論を無視し、臨床検査を谷底に置いてきたことは否めません。」

「臨床検査とは、診療目的で行なわれる患者の状態、疾病の状態を評価することです。医科では臨床検査がなければ診断・治療が出来ない。つまり、患者を診る前に検査をするのです。歯科では臨床検査がなくても診断・治療をしてきたのです。患者を診る前に検査が要らない長い時代が続いたのです。歯周病は炎症です。臨床症状は発赤、腫脹、発熱、疼痛、機能障害、出血、膿などです。炎症の病態は、細菌が原因で白血球の滲出、CRPの上昇、血液沈降速度の亢進、抗細菌性タンパクの上昇などです。これらを調べないで、何故プロービングが検査として成り立つのでしょうか?。プロービングは検査の補助的手段ではないでしょうか?」


今回の学会テーマである「連携医療における歯周病治療」という観点から、例えば糖尿病患者さんを診る場合、特に歯周病を糖尿病の合併症として診る場合に、糖尿病を治療している医師が求めているものは歯周ポケットの深さではないということなんです。
出血の有無を求めているなら、BOPではなく唾液遊離ヘモグロビンを検査すべきなのではないか?、ということなんですね。

これは、今後の地域保健活動における成人歯科健診などにも通ずる重要なところです。
色々と考えさせられます。

実際、会場内では井上先生のおっしゃる論旨を理解出来ていないと思われる先生方から、
質問が相次ぎました。



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