第62回日本口腔衛生学会総会@松本

会場のキッセイ文化ホールは、緑に囲まれ北アルプスも遠望できる好環境。

今回の日本口腔衛生学会に出席させていただくにあたり、交通費・宿泊費・学会参加費、要するに飲食費以外は藤沢市歯科医師会持ちで、会員の皆様の会費を使わせていただきました。誠にありがたいことであります。

私が日本口腔衛生学会に初めて参加したのは、2010年の10月でした。
その時に印象的だったことは「アルコールの為害作用が大きく取り上げられていること」でした。当時すでに、WHOがアルコールの規制に乗り出しつつありましたが、喫煙がそうであったように、きっと何年後かにはアルコールはリスクファクターとして当たり前のように(喫煙と同様のレベルで)歯科業界で語られるようになる可能性が高いのでは?、と思ったものでした。

それから2年半が経ち、今回の口腔衛生学会ではアルコールは歯周疾患におけるリスクファクターとして周知され、アルコール耐性によってリスクが分類されるまでに至りました。具体的には、日本人の56%を占めるアセトアルデヒドの分解が早く酒を飲んでも赤くならない「活性型」の人は歯周病のリスクが低く、40%を占めるアセトアルデヒドの分解が遅く酒を飲むと赤くなる「不活型」の人は歯周病のリスクが高い(アルコールを飲まない人の4.42倍高い)ことが判っています。ちなみに残りの4%のアルコールを飲めない(受けつけない)人はリスク換算せずに1倍で扱うことになっています。

歯周疾患と全身疾患の関連について論じられるようになって久しく、今では糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患、誤嚥性肺炎、低体重児出産、骨粗鬆症、がん(肺がんは除く)、アルツハイマー病、パージャー病、掌蹠膿疱症、慢性腎疾患が歯周病によってリスクが増大することが判っています。さらに脂質異常症や肥満とも関連してメタボリックシンドロームのリスク因子であることも判っています。

それに加えて近年、関節リウマチと歯周疾患の関連性が解明され、今学会ではトピックとしてシンポジウムで取り上げられておりました。
具体的には、原因不明の自己免疫疾患だった関節リウマチは、2010年に原因がシトルリン化タンパク質にあることが解明されました。関節滑膜中の滑液タンパクであるアルギニンはPADという酵素によりシトルリンに変換されますが、アルギニンがシトルリン化されると「非自己」として生体から認識され免疫反応が起こり関節リウマチが発症するというわけです。リウマチ患者の滑膜からは高い P.gingivalis 抗体価が検出され、P.gingivalis が滑液タンパクのシトルリン化を亢進し、リウマチの発症・進行に関与していることが明らかになってきました。このことは、同時に歯周組織もシトルリン化されることを示し、歯周炎とリウマチは似た発症機構であったことが判明したのです。
以前から「歯周炎はアレルギーの一種である」と論じる人がおりましたが、これはあながち間違いではないということになります。



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